醉酒的女人

音響デザインが良い。

ロウ・イエがカサヴェテスから強い影響を受けていると言う所以がよく分かった。今作で言うと音楽の系統と入るタイミング、まんまとロウ・イエのそれだった。

トラウマ級ショック映画。

終始緊張感がハンパない。

良いコンディションで観ても引きずられそうになる。というかなった。観終わって手の震えが止まらない。自分は今のようにこうやって“狂わず”でいられるのは幸運でありただの偶然で、たぶん何かの拍子で簡単に(世間から見て)”異常”の方に走っていってしまう。

タイトルの影響もあり、けっこう終盤のほうまで”パートナー選びの重要性“”本当におかしいのは実は亭主ではないか”“(世間)から見た‘おかしい人’への自分のありべき考え方や接し方は”が今作への感想のほとんどを占めていたが、こうやって簡単に誰かが”おかしい“とジャッジし線引きしようとする自分も危うい。それだと映画に出ていた‘人を自分と違うからといって無理解の態度で遮断する’人たちと何も変わらない。

男も本当に”異常”なのか。女の”異常”は男の影響だとしたら男もまた誰かの影響で”異常”になっていったのか。母親かもしれない。あの母親はとても正常には見えなかった。ではあの男の”異常っぷり”を見てみぬふりをする医師は？男の同僚たちは？”正常”と言えるような人間はこの映画にひょっとして存在しているのか。女の両親はあるいはそうかもしれない。でもこれまで一度も”狂った”ことがなく、これからも”狂わない”という保証がどこにもない。それで僕は思った。”狂う”ことは何も病気という大それたことではなく、ある時期の’ある状態’にすぎないのではないかと。周りの愛、肯定、普通に接することこそが何よりの薬ではないかと。映画の最後はまた冒頭のような日常に戻ったが、それをまたの悪夢の始まりと捉えるか、騒ぎの後に転機を迎えた新たなスタートと捉えるか。

「私を見た時にどう思う？”僕達のママだ”それともこういう風に思ってる？”バカみたい”とか”凶暴だ”とか・・・」

「頭が良くて美人で ママは繊細だ」